チャーリーとチョコレート工場

http://wwws.warnerbros.co.jp/movies/chocolatefactory/

ワタクシ事で先月は映画どころではなかったので、今月にもつれこんだティム・バートンですが…
ちょっとヤキが回ったか?
原作未読ゆえか、そんなガッカリ感が漂いました。


主人公、チャーリーは絵に描いたような貧乏家庭に育った少年。毎日の食事はキャベツのスープだけ、4人の寝たきり老人を抱え、父親はただでさえ安月給なのにレイ・オフされてしまいます。
そんなチャーリーの家の直ぐ側にそびえたつ、チョコレート工場。
かつてチャーリーの祖父も働いていたその巨大な工場の主は天才と言われたショコラティエで、数々の不思議なお菓子を発明したウォンカ氏でしたが、ある時従業員の裏切りに合い、お菓子のレシピを次々と盗まれ、人間不信に陥ったウォンカ氏は従業員を全員解雇。工場を閉鎖してしまいます。
ところが、工場は誰一人従業員を雇用することなく再開。以前と同じようにお菓子を出荷しているのです。その謎に満ちた工場の内部を見た人間は誰もおりません。
そんな奇妙な工場に、全世界に出荷されているチョコレートに封された、たった5枚のチケットを手にした子供が招待される、という一大イベントが!
年に一度、誕生日にだけチョコレートを食べることができるチャーリー少年と、もう一度あの不思議な魅力を持ったウォンカ氏に会いたいおじいちゃんはチケットを夢見ますが…


以下続きは、ネタバレ批評を含みます。
所謂子供向け絵本を原作に持つだけあって、イソップ的な教訓にまみれながら物語は進みます。
ゴールデンチケットを最初に手に入れたのは、ドイツの肉屋の息子。毎日チョコレートを食べつづけた巨漢坊主、オーガスタス・グループ。これは7つの大罪のひとつ、暴食。ついでにケチな面もあります。
両親の管理不行き届きに加え、異様に食い方が汚いですが、ケチを追加したのって、それだけだとあんまり憎めないキャラだからではないでしょうか。だってこの子、チョコ大好きな、純粋なファンだもんねぇ。
お次は金に物を言わせてチョコを買い占めたお嬢様、ベルーカ・ソルト。こちらは強欲ですな。
次はなんでも勝たないと気がすまないガム噛み娘、ヴァイオレット・ボーレガード。チョコレートにも、ウォンカ氏の工場にも興味が無く、ただ「5人の中の一人に与えられる特別賞」狙い。言うなれば高慢、でしょうか?
脱線ですが、このヴァイオレット嬢ことアナソフィア・ロブ、ものすっごく可愛いのだ。久方ぶりにこんな美少女見ました。惚れましたヨ。
http://www.annasophiarobb.com/
え?可愛くない?…同感です。
いつも思うんですが、ハリウッドのコスプレ俳優・女優さんって、スクリーン以外で、なんであんなにブサイクなんでしょ?
ヴァイオレットが「どうやって」チケットを入手したかは不明。こちらもオーガスタス同様に努力の結果かもしれません。
そして、常時キレやすいマイク・テーヴィーは超生意気なハイテク少年。株式だか出荷予想だかでたった一枚買っただけでチケットを当てたそうな。ありえませんが。彼は憤怒?高慢?
ま、彼だって自分で努力して入手したわけです。
…で、最後の一人が主人公、チャーリー少年なんですが、その入手にちょっと難あり。
最初は年に一度の誕生日プレゼントとして両親から。しかし、これはハズレで、がっかりムードの中、「それはお前のだから全部お前がお食べ」とおばあちゃんに言われ、「これはボクのチョコレートだ。だからボクの好きなようにするよ」と全員に配るお涙シーン付き。
次はおじいちゃんが、「二人でもう一度だけ運試しをしよう」と、コインを渡し、買う場所まで指定して買ったチョコ。普通はここでゲット…ですが、これまたハズレ。
失意の中、最後の当選者までが発表され(偽チケットだったが)ますが、ここでチャーリー少年、お札(多分1ドル札っぽい)を拾います。
それを握り締め、お店に直行!見事チケットゲット!
周囲の大人から大金を出す、といわれ戸惑うものの、店員から絶対に売っちゃだめだ、と励まされ、家へ飛んで帰ります。
チャーリー少年以上に喜んだのはおじいちゃん。たった一人だけ許される同行に自ら名乗り出て、家族の同意を得ますが、チャーリー少年は貧しい家の為にチケットを売ることを決めていました。
しかし、もう一人のおじいちゃんに「お金なんぞは毎日刷られ、あちこち出回っている。だが、そのチケットは世界に5枚しかない。そんな物を交換するのはマヌケだ」と諭され、工場見学に赴きます。


ん?

ちょっと待てや。

家族思いで、清貧のチャーリー少年。
ネコババした金でチケットゲットですか?

おじいちゃんはコインで1枚だったのが、お札でも1枚しか買えないチョコレートにも疑問ですが、この行動と結果はおかしいだろう。
拾った物は交番に届けるのが模範的良い子じゃないのか?ん?

ふと脳裏をよぎるのは、チャーリー少年よりも貧乏で、暖かい家庭にも恵まれない一人の少年が、ようやく稼いだお金をポケットにチョコレートを買いに店に走ると、悲しいかな、どこで落としたのか1ドル札。そんな光景。

ティム・バートンならこれくらい挟んでくれよ。

少なくとも、お嬢様ベルーカとチャーリーは自分の努力でチケットを手に入れていない2人、という事になります。
(チョコに対する愛情であれば、オーガスタスも負けては居ません)

そんなこんなで、5人の子供は工場見学を行っていくうちに、一人、一人と脱落していきます。
こちらも最初はオーガスタス。工場の中にある広場は何もかもがお菓子で出来ていて、ウォンカ氏にけしかけられた子供たちはあちこち食べて回ります。
(マイクだけは食べずに破壊しまくりますが)
オーガスタスはチョコの川を素手で触るな、という声も届かず(最初に注意したのではないのがミソ)落ちてしまい、チョコ吸引機に吸い取られてサヨウナラ。
…これって、ウォンカ氏の罠?
お次のヴァイオレットはまだ試作段階のフルコースガムに、ガム噛みチャンピオンとして果敢にも挑戦。副作用でヴァイオレット色になり、パンパンに膨れてしまいます。
一応ウォンカ氏は止めましたが。なんていうか…無謀だけど、男らしくていいじゃないですか。でも、脱落。ウォンカ氏も、ゴメンネ、と言っていました。
お次はクルミ割のエキスパートリスが欲しくなったベルーナ。リス捕獲に乗り出しますがおつむがカラだとみなされ、ダストシュート行き。
この時、ウォンカ氏は殊更ゆっくり鍵束から鍵を探すフリ。ベルーナがダストシュートに落ちてからはさっさと鍵を開ける辺り、確信犯。もしかしたら、氏は「ベルーナのおつむが上等だったら、リスが殻をこじあけるのを楽しみ」にしていたのかも。うひゃ。バートン的スプラッタ。
最後の脱落者はマイク。チョコ転送機に大興奮して、自らを実験台に。そして、チョコでの実験どおりに縮小されるオソマツさ。
…って、こいつ、天才少年だったんじゃないのかよ。単なる馬鹿じゃん。
言葉と方向性が違えど、面と向かってウォンカ氏が天才だと認めたのはマイクが初。
チョコなんかを転送していないで、人間を転送すればもっともっと有益じゃないか!と訴えるマイクと、人間なんて不味いじゃん、と交わすウォンカ氏。
これって、原発の兵器利用と平和利用を問答しているみたいで、根本は同じ原理であり、同じ人間である。
のらりくらりと変人振りを発揮するウォンカ氏だが、冒頭からマイクだけは手酷く嫌っている。はっきりいって、同属嫌悪に他ならない。ヲタクがヲタクを嫌う図、である。さすがバートン。分かってらっしゃる。

ラストは「最優秀賞」を勝ち取ったチャーリーが、その引き換え条件に家族の大切さをウォンカ氏に教える、というオチだが、この展開では単なるタナボタでしかない。
ネコババ少年が、のんべんだらりと一歩下がって他の好奇心旺盛な子供たちを眺めていたら最後に幸運を引き当てた、だけである。
かろうじてバートンの定番「老人を大切にする子供」であるが、その他は何とも言いがたく。
このオチに時間をかけたからなのか(当然?)脱落した子供たちのフリークスっぷりも中途半端。
チョコ付けになり、再構成されたオーガスタスはチョコ人間になり、恐らくはこの後自分の体を食べてしまったのだろう。(母親の注意が「指を舐めないで」ではなく「指を食べないで」に注目)
最大限にまで膨らんだ挙句絞られたヴァイオレットは何故だか脅威の軟体人間に。…が、母親のおぞましい物を見るような目もなんのその、彼女はその能力がお気に入りでポジティブシンキング。
異臭ベルーナとぺちゃんこマイクの親子はなんら変化、改善せず?
そもそもベルーナなんて、洗えば終わりじゃん。

ジョニデは変人ウォンカ氏を熱演しているけれど、どうにもしっくりこない。
ウォンカの幼い頃の強制具は倒錯的なバートン趣味を感じるけれども。
結局の所、「成功した」ヲタクなんて、バートンの世界じゃないんだよ。鼻つまみのくせにヲタクには共感を得ている所詮は日陰者でなきゃ。
本当ならこの作品の主人公足りえるのは、チャーリーでもウォンカでもなく、4人の餓鬼フリークス達だったはずなのに。


チャーリーのネコババ(どんなに「イイコ」でも結局は自分の欲しいものに対しては倫理観が薄れるコスイ子供の部分)は、原作に忠実なのか、果たしてバートンの足掻きなのか。
ウンパ・ルンパの悪趣味度も今ひとつ。

ともあれ、今回は面白くない一品だったので、次回はスッキリした映画を見たいです。
…って、気が付いたら、「シン・シティ」は酷く離れた劇場でしかやらない&上映期間が超短い事が判明。ヤバっ!
くそー。シネコンなんて大嫌いだ!